松本人志:笑い(の為に悪魔)に魂を売った男

11年1月14日、Tumblr.上で書いた記事を転載します。
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ダウンタウン・松本人志と言えば、日本の漫才とお笑い界全体を変えた男、孤高の天才芸人、常にそんな扱いをされる芸人だ。スベってもスベっても映画を撮り続けるかたくなな姿勢を揶揄する向きもあるし、毀誉褒貶も激しい。

私はこの人が基本的に好きなのだが、それは「見ていて背筋が寒くなるほど、笑いに対して残酷である」という部分に参っているのだと思う。


だいぶ以前になるが、何かの番組で見た西川きよしとダウンタウンの楽屋トーク。
松本は、西川の豪奢な生活ぶりをネタにする。

松本「師匠の楽屋にご挨拶行ったらね、師匠中華料理を出前で取って、畳の上に6皿ぐらいバーッ並べて、ガーッと食べてはるんですよ。ご飯山盛りで左手に茶碗持って」
西川「そない大層やないがな」
松本「もうねえ、(中華料理屋の円卓になぞらえて)畳回しながら食べてはりましたから」

計算通りの笑いが起こる。
ここで西川がしきりに感心する「まっちゃん、そう言うのホンマオモロイわ~、ホンマ上手いわ」。

西川が手放しで絶賛する様が妙に印象的で、記憶に残っていた。

数カ月後、何気なくテレビを見ていてびっくりした。西川きよしを前に、別の現場で松本が全く同じ話をしているのである。
オチも同じ「畳回しながら食べてはりました」
ここで西川が全く同じように反応したのだ。「まっちゃん、ホンマ上手いわ~」

私はぞくぞくするような笑いを覚えていた。
西川はほぼ間違いなく、このくだりの話を忘れている。そして、100%確実に松本はこの話を西川の前で(及びテレビで)したことを覚えている。
松本は、西川が話を忘れていること、よって同じようなリアクションをくれるであろうことを読んで、全く同じ話を振ったのだ。
先輩をナメ切った所業である。

西川きよしはダウンタウンにとって大先輩・師匠であるし、吉本興業最大級の重鎮だ。
ただし、大方の人が気づいているように「笑い」に対するセンスは極めて凡庸である。ただひたすらにマジメなだけが取り柄の芸人だ。
松本は、そんな西川のキャラを徹底的に利用したのである。


例えばダウンタウンDXでのゲストに対しても、お笑い芸人でも何でもないタレント・あるいは女優に対して、松本は「オモロないねん」と非情にツッコむ。
三田佳子のような、押しも押されもせぬ大女優に「その話、これからオモロなるんでしょうね」と言い切る姿は、松本人志にしかできない芸当だ。

おそらく、単にその場でのウケ狙いだけではなく、彼は本気でそう言ってるように思うのだ。
自分の番組に出るからには、笑い全くなしで話すことなど許さない。笑いを取れないやつは容赦なく貶める。
そういう残酷さが画面からにじみ出ているのである。
彼にとって「笑い」だけが唯一の評価尺度であり、笑いの前には地位も名声も全く関係ないのである。まさしく「世の中にはスベる人間とスベらない人間の二種類しかいない」というのがポリシーなのだ。

明石屋さんまや島田紳助も基本的には同じ人種であるが、彼らはやはりテレビメディアに阿るところがある。適当なところでヨイショもするし、番組に番宣で来たタレントは、スポンサーとの関係もあるから二線級であろうが丁重に扱う。

しかし、松本人志はそういう心遣いを全くしない。
場の空気を完璧に読んで動く浜田雅功という相方抜きでは、危なくてしょうがない。逆に松本が上記のような暴走を見せるのは、浜田と一緒のときだけである。
自分でも知悉してはいるのだろう。


故・横山やすしなどとは全く違う意味での「破滅型芸人」、それが松本人志なのだと思う。

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