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zoom RSS メシアン「アッシジの聖フランチェスコ」 カンブルラン:読響 びわ湖ホール公演 鑑賞記

<<   作成日時 : 2017/11/23 23:38   >>

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ついにこの日を迎えることが出来ました。
興奮冷めやらぬままに書き殴っています。

私はいわゆる現代音楽好きで、まあ全部とは言わないまでも大半の現代音楽を聴き漁っていますが、その中でもオリヴィエ・メシアンが大のお気に入りです。
どちらかというと前衛音楽と言うよりは「クラシック」の範疇に入る作曲家ですが、その唯一無二の響きが本当に好きなんですよね。

メシアンの作品とみれば、CD・DVD・スコア等多数買い漁っていますが、それらの中でも最初に聴いて「これは凄い!」と感動したのが、唯一のオペラ「アッシジの聖フランチェスコ」でした。
4時間半という長大な演奏時間(と言っても「神々の黄昏」よりは短いけど)、巨大なオーケストラと8人のソリスト+合唱団、全編に聴かれるメシアン節の炸裂。正に音の万華鏡であり、一時期は憑かれたようにこの曲の音源を探し回っていたものです。

さて。
本公演の情報を初めて得たのは、昨年末に遡ります。
びわ湖ホール特別講演として、演奏会形式で本作が演奏される。指揮は読響常任指揮者であるシルヴァン・カンブルラン。正直、最初に観たときには目を疑いました。
このオペラを、演奏会形式とは言え日本で生で聴ける。どう考えても一生で一度のチャンス。行くしかない!

その後、東京(サントリーホール)で2公演追加され、全部で3公演という情報を得ました。何だ、だったら東京で聴きに行けるじゃん。ほっとしました。

チケット発売日6月3日。
この日は土曜日でしたが、出社で打ち合わせしていました。
11時頃「しまった、今日メシアンのチケット発売日だ」と気づき、サイトをチェック。

…え?完売??


11時20分の時点で、東京公演は主要席が全て売り切れていたのです。
結局(泣く泣く)当初予定通りのびわ湖ホール公演を押さえました。

メシアンのオペラ。4時間半の超大作。かつ現代音楽。
そのチケットが1時間かそこらで売り切れる。
アホやろ。と思うと同時に、日本の現代音楽聴衆が確実に増えていることを実感しました。

時は流れ、11月19日に全曲日本初演がサントリーホールにて行なわれました。
そこでの皆さんの感想がまあ熱くて、こちらも否が応でも盛り上がったわけですね。

とまあ、色々あって本日にこぎ着けました。
念のため前ノリして周辺に宿泊、午前中に京都でちょっと土産など買ってから、12時20分頃びわ湖ホールに到着します
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快晴でございました。

客層は…年齢高い。大丈夫?と心配になります。
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さて、今回の演奏陣は以下の通りです。

指揮:シルヴァン・カンブルラン
管弦楽:読売日本交響楽団
天使:エメーケ・バラート
聖フランチェスコ:ヴァンサン・ル・テクシエ
重い皮膚病を患う人:ペーター・ブロンダー
兄弟レオーネ:フィリップ・アディス*
兄弟マッセオ:エド・ライオン
兄弟エリア:ジャン=ノエル・ブリアン
兄弟ベルナルド:妻屋秀和
兄弟シルヴェストロ:ジョン ハオ
兄弟ルフィーノ:畠山 茂
合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、新国立劇場合唱団

ホールの構造はこんな感じです。
私の席は1回後方・やや右手。全体を見渡せる意味では良い位置でした。
楽器群ですが、ある意味主役であるオンド・マルトノは1台が舞台後方の台上に配置されてます。それ以外の2台は、3階前方の特設箇所に設置されています。
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席に着くと、メンバーの何人かが壇上で練習しています。割と自由な雰囲気。この時点で少し安心出来ます。これだけの大作演奏、気負ったら色々マズイですからね。
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オンド・マルトノが3階に鎮座ましましています。
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舞台奥のメイン・オンド・マルトノ
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13時を少し過ぎてから、いざ開演!
ここからは幕ごとにレビューしていきます。

【第1幕第1場:十字架】約20分


冒頭、私が愛してやまない打楽器陣(木琴・鉄琴系)による鳥の声が鳴り渡ります。この曲を最初に聴いて、完全に持って行かれたところです。開始一分で滂沱の涙。カンブルラン師の棒はあくまで軽く、パーカッション3人は一糸乱れぬ演奏でこれに応えます。で、最初のテノール…あれ?弱い?
今般のテノール、フィリップ・アディスは、代役です。当初予定されていた人が体調不良で降板したための代理と言うことで、大変だったとは思うのですが、声量がオケに完全に負けている。私の大好きなフレーズ「J'ai paur.J'ai paur.J'ai paur,sur la route」が全然前に出てこない。
ガッカリしたのですが、それもつかの間。本作の主役である聖フランチェスコ役、ル・テクシエの「O terre」バリトンが響き渡ります。素晴らしい声量!かつ、演奏会形式とは言え役柄を完全に理解している雰囲気で、一気にオペラの世界に引き込まれます。

第1幕で気づいた点は以下の通りです。
・基本的に3と言う数字が基調で、同じことを3回繰り返す場面が多い。ブラザー・レオーネがフランチェスコに「俺、同じこと3回言いましたよね?」と言うのには笑ってしまった。天丼やんけ。今まで英語字幕でしか観てなくて、こういうところがよく解ってなかったのね。
・低音楽器の出番が非常に少ない。特にコントラバス。じっとスコアめくりながら待っている場面が目立つ。メシアンってこういうの多いらしくて「彼方の閃光」では75分中コントラバスの出番は5分くらいだったそうな。このことに気づいてから、コントラバスの挙動が気になって気になって…

最後の場面で合唱が加わり、盛り上がったところで唐突に終わります。場の間でちゃんと一呼吸置いてくれるので、これも解りやすい。

【第1幕第2場:賛歌】約20分


フランチェスコが新しい主題「太陽の賛歌」を唄います。この曲はライトモチーフが非常に明快で、私がこの曲を愛する理由でもあります。

で、コントラバッソクラリネット?とローピッチカートで奏でられる旋律が続くのですが、ここで気づきました。兄弟シルヴェストロ(ジョン・ハオ)と兄弟ルフィーノ(畠山茂)のお二人、ここで出番なのですが、C#の音しか唄っていません。バス合唱でも同じこと唄ってるので、正直最初はどこやってるのか解りませんでした。これ、第8場への伏線なんですよね。
「フランチェスコのテーマ」が執拗に繰り返され、「ライ病患者に会いたい」というフランチェスコの願いが告げられて、第3場へと続きます。

【第1幕第3場:ライ病患者への接吻】約35分


公式には「重い皮膚病患者への接吻」となっています。違うよ。ライ病(もしくはレブラ・もしくはハンセン氏病)だよ。過剰な言葉狩りのせいで、メシアンの伝えたいことが半減してしまっています。
あのね、映画「ベン・ハー」でもあったでしょ。かつてライ病患者というのは謂れもない差別・迫害・虐殺を受けていたのです。そういう人に聖フランチェスコが近づいていく物語なのよ。そこで言葉を手加減しても、得るものは何もありません。

さて、ライ病患者を演じるのはペーター・ブロンダー。
役に完全に入っています。これまで出てきたテノールがイマイチ(存在感も声量も)なのに比べ、格段の歌唱力を誇ります。ライ病患者の苦悩がビンビン伝わってくる歌唱です。パンフによればミーメ(ワーグナー「ニーベルングの指環」準メインキャスト)役で評価されたそうな。さもありなん。

マエストロ・カンブルランは、敢えてスピードを抑えて丁寧に描きます。この後でも触れますが、テンポが遅めなのはかなりの特徴です。

そして登場、天使役のエメーケ・バラート。舞台後方、オンド・マルトノの隣に燦然と現れました。その時点で聴衆はうっとりの境地です。歌声がこれがまた素晴らしいと言うか、天使そのもののソプラノで…本曲の要はまさしくこの天使役であることを痛感しました。
3人とも、演奏会形式でありながらしっかり演技しています。特に、フランチェスコがライ病患者に接吻するシーン、指揮台を挟んで二人が見つめ合う演出に、不覚にも涙が止まりませんでした。ゲイとかホモとかそんなゲスな視点ではない、本当の「愛」が描かれていました。


ようやく最初の休憩。
外に出ると、びわ湖に虹が架かっていました。まるでライ病患者の奇跡を物語っているような…滋賀県に小さな奇跡が訪れていました。
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休憩中も練習に余念のない打楽器隊の皆さん。
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【第2幕第4場:旅する天使】約35分


この場面の音楽は私が最も好きな部分です。めまぐるしく場面展開し、ポリリズムに溢れ、ユーモアも溢れている。
再びブラザー・レオーネが現れ、J'ai peurと唄う。さらには天使が本曲で唯一前面に出てきて、素晴らしい歌唱を披露します。
その後、次々と新しいモチーフが現れるのですが、既存の演奏に比べてかなりテンポが抑えられていることに気づきます。
具体的には:
・オンド・マルトノをトップにしたグリッサンドから、木管楽器が「笙」のように鳴り響くモチーフ(メシアン本人が、笙から着想を得たと言っている)
・ピッコロの超高音域で奏でられる「ジェリゴーヌの主題」。ピッコロの皆さん、この部分は苦戦している感じで、休憩中もずっと練習してました。
・最も印象的だったのは、天使が扉を叩く「ダダーンダーンダダーン」!全曲を通じて最も印象的なフレーズの一つですが、これをスタッカート気味で実に軽く処理してました。妙に気合いが入ってしまうこの部分、肩すかしではありますが、逆に面白いと感じました。

カンブルラン師は、この曲をより粘っこく解釈している感じですね。最初はもどかしいのですが、繰り返し聴いているうちにモチーフの気持ちよさが伝わってきます。

この場面にのみ登場する兄弟エリア(ジャン=ノエル・ブリアン)は絶好調。演技も歌唱も憎々しい限りで、天使を拒む小物ぶりを存分に発揮してくれました。字幕と相まって結構笑える場面でした。
その後登場する兄弟ベルナルド(妻屋秀和)が、実に良かった。声量はフランチェスコ師に劣らない、見事なバリトンを披露してくれました。ソロ歌手陣の日本人筆頭の役、伊達ではなかったと言うことですね。

【第2幕第5場:音楽を奏でる天使】約30分


すみません、この場面が一番辛いというか、退屈でした…正直、瞬間睡眠に3度襲われました。実際にはもっとかも知れない。
フランチェスコと天使の会話で成り立っているのですが、特段新しい展開もないし、ここまでの疲れもあって聴き所を失っていました。パフォーマンスは全く衰えていないのですが。
ですが、最終盤に至って聞こえてくる、合唱とオンド・マルトノのアンサンブル!3台のオンド・マルトノの存在がくっきりと表れてきます。正に天国の音響。別の意味で眠くなります。極小音で流れるコーラスが絶品。
普通の歌劇形式であれば、演出に目を取られて乗り越えられたであろうこのシーン。これほど退屈とは正直意外でしたが、最後はブラザー3人が気絶したフランチェスコを助けに来て、事なきを得ます。

【第2幕第6場:鳥たちへの説教】約55分

本作品中最も長大な(ついでに言うと最後に作曲された)この場面。CDやDVDでは退屈だったので、多分挫折するだろうと覚悟して臨みました。
結論から言うと、非常に楽しめました。いろいろな鳥の声が順繰りに紹介され「あ、これってこの鳥の話か」と言うことが解り、飽きません。まあ、こういう楽しみ方が出来るのはそれなりのメシアンファンに限られますが。
クライマックスは「鳥たちのコンサート」で現れます。まさに音の洪水で、生演奏でなければ体験出来ない部分です。ここでも3台オンド・マルトノ大活躍で、手前のほうから今まで聞こえなかった音響が聞こえます。2列前のお爺ちゃん達がキョロキョロしてたのが印象的だった。
生演奏を聴いて、初めてこの場面の素晴らしさが解りました。


2度目の休憩。腹が減ったので事前に購入しておいたパンを食って最終幕に臨みます。
あと、3階にあるオンド・マルトノを観に行きました。どうも演奏者が見えないと思っていたら、スピーカーのみが前に出されて演奏者は奥で操作してた。プロンプターみたい。
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【第3幕第7場:聖痕】約30分


え、この場ってこんなに激しかったっけ?
CDやDVDで聴いてる限りでは、予想もしなかった音圧に圧倒されます。最初の部分は「音価と強度のモード」の再現。先生、要所でこのトータルセリー技法使うから油断できん。
3台オンド・マルトノが最大限の効果を発揮し、爺さんのキョロキョロも最高潮ですww。結構めまぐるしい展開に心を奪われつつ、あっという間に終了。ダダーンダーンダダーンもキレッキレで再現されました。そして、後半のコーラスの天国感がハンパじゃない。このまま終曲でもおかしくない美しさです。
カンブルラン師が、コーラスへのキューを「横にキリッと左手で一閃」で示していたのがなんか笑えました。

【第3幕第8場:死と新生】約40分


すみません、最終場で盛り上がるべきところなんですが…長かった。つーか、俺の聞き込み不足で「え、こんなに長かったっけ?」とビックリ。
ソリストは、可愛そうな兄弟エリア以外は全員登場なんですが、兄弟シルヴェストロと兄弟ルフィーノは、第2場と全く同じ扱いで、C#のみ唄って終了。おいおい、扱い酷すぎるやろ。これなら兄弟エリアのほうがまだマシやで。CDやDVDでは全く気づかないポイントでした。ついでに言えば、ここまでの低音部隊稼働率の低さにヤキモキしっぱなしです。
色々回想を経て、天使も出てきて、サヨナラと言いながらなかなか昇天召されないフランチェスコ師にイライラして…
ですが、最後の5分に大団円が訪れます。第3幕エンドの再現から、高らかに鳴り響くCの和音。溢れる涙を止めようともせず、私はオーケストラ・全ての聴衆と一緒にエンディングを迎えました。


終わりはちょっと残念だった。マエストロが指揮棒を降ろしきる前に拍手が起こってしまった。サントリーホールではフライングゼロだったらしいので、残念。まあ高齢客が多かったからしょうがない気もしますが。
そしてカーテンコールは、10分以上に及びました。

カーテンコールの模様。30秒だけ撮りました。

カーテンコールでは、フランチェスコ役のル・テクシエが最大の拍手、次が天使役のエメーケ・バラートだったのはまあ想定の範囲内ですが、3番目がライ病患者役のペーター・ブロンダーでした。存在感段違いだったからなあ。みんな、よく聴いてますね。


【以下:雑多な感想】


・マエストロ・カンブルランは聞きしに勝る超絶ぶりでした。
この曲の世界最多指揮回数を誇るだけあり、棒の端々から「俺に任せとけ」オーラ満載で、楽団員も安心して演奏していたように思います。数多いパーカッション主体のシーンでは、指揮と言うよりダンスしている感じ。動きも軽やかで、御年69歳とは思えないバイタリティで、カーテンコールでも一人だけテンションが2桁くらい違いました。
・オケの技量は文句なし。打楽器ばかりが取り沙汰されていますが、全パート素晴らしい緊張感の持続でした。休憩中もコントラバス(本番出番少ないのが不憫で…)・木琴隊・木管隊がひたすら練習していたのが印象的でした。マジメやなあ。
・聴衆はご高齢の方中心。正直メシアンの5時間オペラ聴けるの?と思っていたら、殆ど全員完走してました。むしろ若い人のほうが落後してた。俺の隣にいた30台前半くらいの姉ちゃん、第1幕終了後フェードアウトでした。
・音響は終始クリアで、曖昧さを許さない感じでした。楽器数が多いのでどの音がどこから出ているか迷うシーンも多かったですが、終盤にはほぼ把握出来ました。その中でも、オンド・マルトノの立体配置が際立ってました。びわ湖ホール、エエホールやなあ。

いやいや。
一生に一度の体験でした。もうないでしょう。

この企画を実現してくれた全ての人に感謝しつつ、26日の東京最終公演に思いを届けます。
つーか、メシアンのオペラを3回日本で上演して、全部ソールドアウトって…凄い時代が来たものですねえ。

追伸:
このレビュー書くのに2時間半かかりました。まあ、第1場+第2幕全部くらいの労力か(苦笑)



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